貸切バスの事業を開始するには、道路運送法に基づく事業の許可、運賃・料金の届出が必要となります。
人、車両、施設、設備、安全投資、資金計画等さまざまな要件をクリアしたうえで、それらの資料を整備し申請書類を作成し、運輸局に許可申請をしなければなりません。
このページでは、一般貸切旅客自動車運送事業の許可を取得するにあたっての主な要件を掲載しております。
人に関する基準
事業を安全かつ適切に運営できるよう、所定の要件を満たす安全統括管理者、運行管理者、整備管理者、運転手の選任が必要となります。
安全統括管理者
安全統括管理者は、輸送の安全を確保するため、運行管理者・整備管理者を統括し、安全管理体制に必要な手順及び方法の確立・実施・維持・改善を行います。
貸切バス事業者については、選任が必須となっています。
安全統括管理者となるには、事業采井上の重要な決定に参画する監理的地位にあって、かつ、運行の安全確保に関する業務、点検・整備の管理に関する業務又はこれらの業務等を管理する業務を通算して3年以上従事した経験を有する必要があります。
なお、要件を満たしていれば、代表者や役員、運行管理者、整備管理者等との兼任が可能となっています。
安全統括管理者の選任と併せて、安全統括管理規程の作成が必要です。
>> 安全統括管理者の資格要件など詳しくはこちらをご覧ください。
運行管理者
運行の安全確保を適切かつ効果的に行うため、貸切バス事業の開業にあたっては運行管理者の選任が義務付けられています。
運行管理者の必要数は、営業所の車両数により決まっており、39両までで2人となっています。
なお、運行管理者は、整備管理者との兼務は可能ですが、営業所において運行を管理する者として、運転者との兼務は認められていません。
運行管理者の選任と併せて、運行管理者の選任が必要です、
>> 運行管理者の資格要件など詳しくはこちらをご覧ください。
整備管理者
バスを常に安全に走らせるために、バスの点検や整備、車庫の管理等をするための専門知識を有する者として、整備管理者の選任が義務付けられています。
整備管理者は、営業所に1人いればよく、運行管理者と異なり、運転手との兼務が可能です。
整備管理者の選任と併せて、整備管理規程の作成が必要です。
>> 整備管理者の資格要件など詳しくはこちらをご覧ください。
運転者
申請する車両(バス)の台数や大きさに応じた免許を取得した運転者を確保しなければなりません。
5台のバスで事業を始めるのであれば、5人の運転者が必要です。
なお、下記の方については選任できません。
①日々雇入れられる方
②2月以内の期間を定めて雇入れられる方
③試用期間中の方(14日を超えて使用するに至った方を除く)
④14日未満の期間ごとに賃金の支払いをを受ける方
>> 貸切バス事業に必要な運転者について詳しくはこちらをご覧ください。
車両に関する基準
最低車両台数
営業所を要する営業区域毎に3両以上。
ただし、大型車を使用する場合は、営業所を要する営業区域毎に5両。
なお、車両数が3両以上5両未満での申請の場合は、許可に際して中型車及び小型車を使用しての輸送に限定する旨の条件が付されます。
事業用自動車
① 車種区分
車種区分については、大型車、中型車及び小型車の3区分とし、区分の基準は次のとおりとなります。
大型車・・・車両の長さ9m以上又は旅客席数50人以上
中型車・・・大型車、小型車以外のもの
小型車・・・車両の長さ7m以下で、かつ旅客席数29人以下
② 事業用自動車
申請者が使用権原を有するものであること。(車検証、売買契約書等により使用権原を確認)
使用車両が中古車の場合には、運輸開始までに法律に基づく定期点検整備を実施する必要があります。
施設に関する基準
貸切バス事業を運営するには、適切な規模や設備を有した営業所、休憩、睡眠施設、自動車車庫が必要となります。
営業所
① 営業区域内(府県単位)にあること。
なお、複数の営業区域を有するものにあってはそれぞれの営業区域内にあること。
② 申請者が、土地、建物について3年以上の使用権原を有すること
③ 農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令の規定に抵触していないこと。
④ 事業計画を的確に遂行するに足るものであること。
休憩、仮眠又は睡眠のための施設
① 原則として、営業所又は自動車車庫に併設するものであること。
ただし、併設できない場合は、営業所及び自動車車庫のいずれからも直線2㎞の範囲内にあること。
② 乗務員が有効に利用することができる適切な施設であること。
③ 申請者が土地、建物について3年以上の使用権原を有するものであること。
④ 農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令の規定に抵触していないこと。
>> 貸切バス事業の営業所・休憩仮眠施設について詳しくはこちら
自動車車庫
① 原則として営業所に併設するものであること。
併設できない場合は営業所から直線距離で2㎞の範囲内にあって運行管理をはじめとする管理が十分可能であること。
② 他の用途に使用される部分と明確に区画されていること。
③ 車両と自動車車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保され、かつ、営業所に配置される事業用自動車すべてを収容できるものであること。
④ 農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令の規定に抵触していないこと。
⑤ 申請者が、土地、建物について3年以上の使用権原を有するものであること。
⑥ 事業用自動車の出入りに支障のない構造であり、前面道路が車両制限令に抵触しないものであること。
なお、前面道路が私道の場合にあっては、当該私道の通行に係る使用権原を有する者の承認があり、かつ、当該私道に接触する公道が車両制限令に抵触しないものであること。
⑦ 事業用自動車の点検、整備及び清掃のための施設が設けられていること。
>> 貸切バス事業の自動車車庫について詳しくはこちら
営業所等の現地確認
平成25年10月から、貸切バス事業の許可時に営業所等の現地確認が行われています。
安全投資に関する基準
平成29年4月から、貸切バス事業の許可申請時に次回更新時までの安全投資計画と事業収支の内容が審査されています。
安全投資計画
輸送の安全を確保しつつ事業を適確に遂行するために必要な投資がなされていること。
安全投資計画には次の(イ)~(ヌ)のそれぞれについて記載しなければなりません。
(イ)更新までの期間における事業の展望
(ロ)更新までの期間に実施する事業及び安全投資計画の概要
(ハ)運転者、運行管理者、整備管理者の確保予定人数
(二)車両取得予定台数及び保有車両台数
(ホ)車両の点検及び整備に関する計画
(へ)ドライブレコーダーの導入計画
(ト)初任運転者及び高齢運転者に対する適性診断の受診計画
(チ)公益社団法人日本バス協会の実施する貸切バス事業者安全性評価認定申請計画
(リ)認定事業者による運輸安全マネジメント評価計画
(ヌ)その他安全の確保に対する投資計画
>> 安全投資計画について詳しくはこちら
事業収支見積書
安全投資計画に従って事業を遂行することについて十分な経理的基礎を有していること。
事業収支見積書には、次の(イ)~(へ)のそれぞれについて記載するしなければなりません。
(イ)営業収益
(ロ)投資安全計画(ハ)~(ヌ)に係る費用
(ハ)適正化機関に納入する負担金の額
(ニ)営業外収益
(ホ)営業外費用
(へ)他事業からの繰入
これらの見積もりについて、計画期間中毎年連続で赤字になっていないこと及び申請の直近の決算の財務状況が債務超過でないことが求められます。
資金に関する基準
資金計画
資金計画については、下記のような基準があり、事前に正確な所要資金を算定して、必要な自己資金を、許可までの間常時確保していなければなりません。
① 所要資金の見積りが適切なものであること。
② 所要資金の調達に十分な裏付けがあること、自己資金が所要資金に相当する金額の50%以上、かつ事業開始当初に要する資金の100%以上であること等資金計画が適切であること。
なお、所要資金とは、次の(イ)~(ト)の合計額となります。
(イ)車両費 … 取得価格(未払金を含む)又はリースの場合は1年分の賃借料等
(ロ)土地費 … 取得価格(未払金を含む)又は1年分の賃借料等
(ハ)建物費 … 取得価格(未払金を含む)又は1年分の賃借料等
(ニ)機会器具及び什器備品 … 取得価格(未払金を含む)
(ホ)運転資金 … 人件費、燃料油脂費、修繕費等の2カ月分
(へ)保険料等 … 保険料及び租税公課(1年分)
(ト)その他 … 創業費等開業に要する費用(全額)
法改正により、平成25年10月1日から車両をすべて最初から所有している場合で1,000万円程度の自己資金が必要となります。(自己資金は、各事業者の状況により異なります)
>> 貸切バス事業許可のための所要資金の算定方法について詳しくはこちらをご覧ください。
その他
法令遵守
① 申請者又はその法人の代表権を有する常勤の役員は、一般貸切旅客自動車運送事業の遂行に必要な法令知識を有しかつその法令を遵守すること(法令試験の合格)。
② 健康保険法、厚生年金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法(以下、社会保険等という。)に基づく社会保険等加入義務者が社会保険等に加入すること。
③ 申請者又は申請者が法人である場合にあってはその法人の義務を執行する常勤の役員が、道路運送法、貨物自動車運送事業法等の法令遵守の点で問題のないこと。
>> 遵守すべき法令について詳しくはこちら
>> 貸切バス事業の法令試験について詳しくはこちら
損害賠償能力
旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運行により生じた旅客その他の者の生命、身体又は財産の損害を賠償するために講じておくべき措置の基準を定める告示で定める基準に適合する任意保険又は共済に計画車両の全てが加入する計画があること。
生命または身体の賠償・・・一人につき無制限のもの(平成25年12月より8,000万円から引き上げられています。)
財産の賠償・・・一事故につき200万円以上(免責額30万円以下)のもの
運賃・料金の届出
一般貸切旅客自動車運送事業の運賃料金の設定・変更は、事前(30日前まで)に運輸局に届け出る必要があります。
運賃及び料金の上限額及下限額が、「一般貸切旅客自動車運送事業の変更命令の審査を必要としない運賃・料金の額の範囲」の範囲内のものであって、運賃・料金の適用方法が、「一般貸切旅客自動車運送事業の運賃・料金の標準適用方法」と合致するものであるときは、審査は必要とされません。
しかし、上記範囲外の運賃・料金を設定しようとするときは、道路運送法第9条の2第2項において準用する法第9条第6項各号に該当する否かの審査が行われ、原価計算書その他運賃・料金の算出の基礎が記載された書類の提出が必要となります。
貸切バス事業の開業をご検討の方へ
ホームページをご覧いただきまして誠に
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行政書士の中村 武と申します。
幣事務所では、南大阪・和歌山地域を中心に、貸切バス事業許可申請、運賃設定届出、運輸開始届出等貸切バス事業の運営をサポートしております。
迅速・丁寧に対応することはもちろんのこと、事業者様のお話をしっかりと伺い、明るい未来が築けるよう手続だけではなく、将来の事業運営のことについても事業者様と一緒に考えサポートします。
大阪府・和歌山全域に対応しておりますので、貨物運送事業に関するお手続きでお悩みの際は、ご遠慮なく当事務所へご相談ください。
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